やさしさプラスは、公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟を通じて、途上国の女性たちが教育の機会を得て自立し、地域が活性化することを目指す活動を支援しています。ここでは、カンボジアでの活動をご紹介します。
過去の内戦などによって、学校に行けないまま大人になった人々が暮らす地域では「読み書きができないために、安定した収入のある職業に就けない」、さらには「本人や子どもが教育を受けられない」という貧困のサイクルが続いています。また、母親の知識不足によって、子どもが危険な目にあうことも少なくありません。
カンボジアは、近年目覚ましい経済成長を続けています。その一方、農村部では、洪水や干ばつが発生すると農作物を収穫できなくなり、安定した収入を得られないばかりか、食べ物に困る生活をしている家庭もあります。また、貧困だけでなく、教育に対する親の理解不足などから、小中学校段階での子どもの中途退学が後を絶ちません。そのような地域に「寺子屋」をつくり、識字教育や収入向上を支援するとともに、その学習の場を村の人たちの手によって運営できるように、必要な知識や技能を伝える人材育成を行っています。
シェムリアップ州内の20ヵ所の村で6月から始まったクラスでは、15歳以上の493人が基本的な読み書き・計算を学んでいます。
そのうち女性は365人で、小さな子どもをあやしながら勉強している人もいます。
夜の7時から9時まで週6日、授業が行われています。
私は、近所の村をまわって果物を売る仕事をしています。あるとき、看板のある民家に入っていったところ、犬に足を噛まれてしまいました。その看板には「猛犬注意」と書いてあったのです。もし、文字を読めていたら避けられたのに…。
そんな思いから、寺子屋へ通うことにしたのです。そして今では、簡単な読み書きができるようになりました。
私の3人の子どもたちには、必ず教育を受けさせたいと思っています。
貧困のサイクルを断ち切るためには、収入の向上が欠かせません。その支援として、寺子屋では職業訓練プログラムも行っています。
リエンダイ寺子屋では、「ロッピェ」と呼ばれる籐で編みかごなどを作るクラスが開かれています。
ここでは、村の女性たち13人が毎日熱心に学んでいます。完成品の売上の2割は寺子屋、8割は製作者の収入となり、地域の活性化につながっています。
籐製品の作り方を学んだことで、以前より50~100ドルほど多い月収を得られるようになりました。
そのおかげで、家族の生活を支えることができます。今では、家の前にお店を開き、私や村の女性たちが作った製品を販売する仕事をしています。
シェムリアップ州スレイ・スナム郡で、寺子屋の新設計画が進められています。場所は、世界遺産で有名なアンコール遺跡がある市街地から、車で約2時間ほど離れたスラエン・スピアン村です。村の人々は、寺子屋の完成を心待ちにしています。
開所の際には銘板が設置される予定です。